KOICHI'S ROOM
『HIBARI』で見逃してほしくない3つの場面
NBAバレエ団6月公演
『リトルマーメイド』『HIBARI』- Koichi’s Room
皆さまこんにちは。芸術監督の久保綋一です。
『HIBARI』についてはこれまでも書いてきましたが、今回はもう少し絞って、この作品の中で僕が「ここはぜひ観てほしい」と思っている3つの場面を書きたいと思います。
『HIBARI』の面白さは、ひばりさんの有名曲が並ぶことそのものではありません。
一曲一曲が、リン・テイラー・コーベットによって、まったく違う身体の質感に翻訳されていることです。
歌の奥にある熱、哀しみ、華やぎ、孤独が、別のかたちで表現されています。その面白さこそ、この作品の核だと僕は思っています。
まず一つ目は、「お祭りマンボ」です。
これはもう、理屈より先に楽しい。
舞台が一気に熱を持って、観ているこちらの身体まで前のめりになる。
前回公演の感想でも「とりわけ『お祭りマンボ』が楽しかった」と書かれていましたが、僕も本当にそう思います。
こういう場面を見ると、音楽の内側にある勢いや高揚感をきちんと掴んでいたのだと分かります。
男性群舞の躍動が、そのまま客席の温度を上げていく場面です。
二つ目は、「悲しい酒」です。
リンは創作前のリサーチで、記念館やゆかりの地を訪ね、DVDやCDをたくさん見聞きする中で、特に『悲しい酒』は「本当に素晴らしく、心が打たれる想いでした」と語っています。
つまり、ただ直感で作ったのではなく、ひばりさんを深く理解しようとした上で、この曲に強く惹かれたということです。
舞台では、黒い布と、一人の女性、二人の黒子で、感情だけでなく情景までも見えてきます。
歌は耳で聴くものですが、踊りになると視覚が加わる。
その分、悲しみや孤独がより伝わってくる。ここにはリンの想像力の大きさが、はっきり出ています。
三つ目は、「真赤な太陽」です。
僕はこの場面もとても大事だと思っています。
ひばりさんは演歌の枠の中だけにいた人ではなく、多彩な歌に挑戦し、鮮やかに自分のものにしてきた人でした。
この曲には、その広がりがある。
『HIBARI』が哀しみや追悼だけで終わらず、前へ出ていく力や時代を押し広げる華やかさを持っているのは、この場面があるからだと思います。
バレエファンの方にも、この作品は歌を身体へ翻訳する作品なのだと、きっと伝わるはずです。
『HIBARI』は、題材の珍しさだけで観る作品ではありません。
NBAバレエ団を観てくださっている方ほど、一曲ごとに振付の質感が変わり、音楽の受け取り方が変わっていく面白さを感じていただけると思います。
再演がいつでもできる作品とも限りません。
だからこそ今回、この3つの場面はぜひ劇場で受け取っていただきたいと思っています。
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