『リトルマーメイド』の音楽の素晴らしさ、そしてマイケル・モーリッツという存在

 

『リトルマーメイド』の魅力はいろいろあるのですが、僕はやっぱり、音楽の素晴らしさも挙げたくなります。
耳あたりがいい、というだけではなくて、海の幻想や切なさ、登場人物の気持ちの揺れまで、音楽が表現してくれるんですよね。
踊りを支えるのももちろんですが、舞台そのものをつくっている感じがします。
終演後もしばらく耳に残って、「これ、サントラがあったら毎日聴きたいな」と本気で思うくらいでした。

しかも、この音楽を書いたのが、実はとても面白い経歴の持ち主なんです。
マイケル・モーリッツ(Michael Moricz)は、作曲家であると同時に、編曲家、指揮者、ピアニスト、音楽監督として長年活動してきた人で、
テレビ、舞台、オーケストラ、バレエの現場を経験してきました。PBSの『Mister Rogers’ Neighborhood』で音楽監督を務めたほか、
ピッツバーグ交響楽団やさまざまなバレエ団、舞台作品にも深く関わっていて、いわば“舞台音楽力”をすごく持っている人です。

そして何より大きいのは、彼がリン・テイラー・コーベットと長く一緒に作品をつくってきたことです。
リン自身も、マイケルとは15年来の付き合いで、これまでに3作のバレエをともに作ってきたと語っています。
実際、確認できる資料でも、両者の協作として『The Ugly Duckling』『The Little Mermaid』『HIBARI』が挙がっています。
つまり『リトルマーメイド』の音楽があれほどしっくり来るのは、たまたまではなくて、長い信頼関係の中で生まれてきたものだと思います。

そう考えると、『HIBARI』での仕事もとても興味深いです。
『HIBARI』では美空ひばりさんの楽曲を使いながら、マイケルが全体のスコアを構築し、曲と曲のあいだをつなぐ編曲や作曲も担当していました。
つまり既存曲を並べただけではなく、舞台としてひとつの流れになるよう、音楽全体を組み立てていたわけです。
紹介記事でも、語りの場面のBGMや曲間を彼が担っていたことが触れられていて、ここでも彼の力がかなり大きかったことがわかります。

ちなみに、英語版から日本語版にする際、アフレコに来ていたあるミュージカル俳優の方が、
思わず「ディズニーより曲が良いですね!」と言っていたのがとても印象に残っています。
もちろんこれは感想のひとつではあるのですが、それくらい、初めて聴いた人の耳にも強く残る印象が、この作品の音楽にはあったのだと思います。

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