6月公演「真夏の夜の夢」の見どころをご紹介します!

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
先日のNBAバレエ団ガラ公演「Grace and Speed 2024」にご来場頂いた皆さまへは、改めて心より感謝を込めて「ありがとう」をお伝えしたいと思います。お陰様でご好評をいただきまして、ダンサー共々大変励みになっております。またご要望頂ければ、このようなガラ公演を再演したいですね。
さて、次回作「真夏の夜の夢」ですが、幻想的な森のセットを背景にプスっと笑ってしまうシーンや、とても美しいシーンが織り交ぜてあり、あまりバレエに馴染みのない方も、予備知識なく楽しめる作品です。(そしてここだけの話、他の巨匠が手がける版よりも面白いと個人的に思っています。)
NBAバレエ団のレパートリーでも非常に人気の高い作品で、お客様のブログなどでも「予想以上に面白く、楽しくスピーディーな演出にすっかり魅せられました」とご感想いただいております。それでは恒例ですが、見どころを3つ皆さまにご紹介したいと思います。

その1:演出・振付

振付はトニー賞(アメリカの演劇界で最も栄誉ある賞)を受賞し、英国ロイヤルバレエ、新国立劇場などで上演されている「不思議の国のアリス」や、ミュージカル「パリのアメリカ人」なども手がけたクリストファー・ウィールドンです。彼はイギリス人で、ロイヤルバレエを経てニューヨークシティバレエで踊っていたのですが、その在籍中の2000年(わずか27歳の時!)に初めて全幕作品である本作を手掛けています。初演は私も当時在籍していたコロラドバレエで、パック(お調子者でちょっとお間抜けな妖精)を踊りましたが、とにかくステップは詰まっているし、テクニックも難しく、スタミナ的にもハードだったのを覚えています。ですが、パックがロバの頭を職人(という役柄がいます)に被せるシーンを始め、コミカルなシーンで自分の演技を見てお客様が笑ってくれるのが楽しく、「次はもっと笑わせてやろう」とより頑張るようになっていきましたね。
演出的にはバランシン版とアシュトン版の良いとこ取りで、シェイクスピアの古典をより現代的な感覚で再解釈した印象です。フェリックス・メンデルスゾーンの「結婚行進曲」などのお馴染みの楽曲が、全2幕に様々な演出と共に無駄なく詰め込まれています。

その2:同時上演NBAバレエ団初演「セレナーデ」

1934年に初演され、今なお世界中で上演され続けている巨匠ジョージ・バランシン振付の傑作です。NBAバレエ団でのバランシン作品は「スターズ・アンド・ストライプス」、「アポロ」に続く3作目になります。
「アポロ」での私の見どころ紹介がストラビンスキーの音楽との完璧な調和だったように、「セレナーデ」においても使用する楽曲「弦楽セレナーデ ハ長調op.48」とダンサーが奏でる踊りとのハーモニーが本当に素晴らしい。
私個人的なバレエの楽しみ方になりますが、ダンサーの洗練された技術、鍛えられた肉体美はもちろん、踊りを見ていてダンサーと楽曲が一体になれているのかを意識しています。今回のセレナーデのように、アップテンポとスローテンポが織り交ざった楽曲の振付や、それを表現するダンサーの動きがいかに「音楽を表現できているか」が欠かせません。
本作は私もバランシンの名言として度々紹介している「音楽を見て、踊りを聴く」をまさに体現していると思います。

その3:ダンサーたちによる新たなる挑戦

昨年12月の「ドン・キホーテ」公演でプリンシパルに昇格した山田佳歩が初めて「真夏の夜の夢」の主役、ティターニアを踊ります。山田の風格漂う凛とした佇まいはまさに妖精の女王にピッタリ。確かな技術をベースに初役をどう演じるのか、私も楽しみです。ティターニアの夫役である妖精王オベロンを演じるのは、押しも押されもせぬプリンシパルとしてバレエ団を支える宮内浩之が務めます。宮内はオベロンを演じた経験があり、今回も観客を惹きつけてくれるでしょう。
ダブルキャストとして、今年4月からファーストソリストに昇格し、今後の成長が楽しみな渡辺栞菜が踊ります。長い手足に恵まれ、清楚な容姿でまた山田とも違う個性を演じてくれそうです。パートナーの刑部星矢も今回初挑戦。昨年のドラキュラ役を見事に演じきった刑部が新たな役柄にどう挑むのか、長身で恵まれたルックスを生かし、今回のオベロン役を通じ、さらにダンサーとして一皮むけると信じています。
また、同じく昨年12月にプリンシパルに昇格した勅使河原綾乃は、その確かな技術と表現性を生かし、超絶難度ステップが盛り込まれたピースブロッサムという妖精のリード役を、私も演じた経験のある茶目っ気たっぷりの妖精パックはファーストソリストの新井悠太、そして、4月から同じくファーストソリストに昇格した北爪浩史が演じます。
この機会にぜひ、特別な世界を体験してください。心踊るバレエ公演をお楽しみに。クリストファー・ウィールドンの「真夏の夜の夢」であなたも魔法にかかりましょう!

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