KOICHI'S ROOM
リン・テイラー=コーベットさんへの追悼
NBAバレエ団を代表して、リン・テイラー=コーベットさんのご逝去に心よりお悔やみを申し上げます。
彼女は世界中の舞台芸術に多大な影響を与え、彼女の作品は数えきれないほどの観客に感動を届けてきました。その素晴らしい才能に触れ、共に創作の時間を共有できたことは、私たちにとって大きな喜びであり誇りでもあります。
私が初めて彼女に出会ったのは、私がコロラドバレエで活動していた時期でした。
当時、彼女はアメリカンバレエシアター(ABT)のために振り付けた「ガチョーク讃歌」という楽しいバレエのステージングでコロラドバレエに来ていました。この出会いがきっかけで、NBAバレエ団の芸術監督に就任した後、私はぜひこのバレエを日本でも上演したいと考え、リンを日本に招待しました。
彼女の滞在中に、日本のテレビで放送されていた美空ひばりさんの特番を見たリンは、「この素晴らしい歌手は誰?彼女のバレエ作品を作るべきよ!」と言いました。そこで私が「ぜひあなたにお願いしたい」と答えると、話がトントン拍子に進み、NBAバレエ団オリジナルの「HIBARI」という、世界にただ一つの特別なバレエ作品が生まれました。
その後も、歌とセリフが融合した「リトルマーメイド」など、彼女の作品はNBAバレエ団の人気演目として愛されています。
リンの演出・振り付けの才能は本当に素晴らしく、スタジオでダンサーを見ながら瞬時に作品を形にしていくその姿は圧巻でした。彼女の音楽的で痛快な創作スタイル、そして気さくで温かい人柄は、私たち全員に深い感銘を与えました。
スタジオの外でも、リンは楽しい存在でした。
彼女と一緒に食事をしながら、彼女自身の現役時代のエピソードを聞かせてもらう時間は、私にとってかけがえのない思い出です。
彼女の存在は、私にとってキャリアの一部とも言えるものであり、心から尊敬していました。
リンが残してくれた数々の作品と想いは、これからも私たちと共に生き続けます。彼女がいなくなってしまったことは本当に寂しいですが、その偉大な功績と輝かしい人生を心から称えたいと思います。
リン、どうか安らかにお休みください。
NBAバレエ団
芸術監督 久保 綋一