KOICHI'S ROOM
『くるみ割り人形』舞台を楽しむための豆知識!
NBAバレエ団12月公演
『くるみ割り人形』- Koichi’s Room
くるみ豆知識 – “あの物語”、本当はこうだった!?
NBAバレエ団の12月恒例「くるみ割り人形」。
実はこの作品、ただの夢と魔法のクリスマス物語ではありません。
原作をひもとくと、思いがけず深く、ちょっぴりシュールな物語が隠されているのです。
デュマ版?
いいえ、ホフマン派です。
チャイコフスキーが音楽をつけた台本は、フランスの文豪アレクサンドル・デュマによる改作版をベースにしていますが…
実はその元となったのが、ドイツの作家A.T.ホフマンのオリジナル小説『くるみ割り人形とねずみの王様』です。
私自身、このホフマン版が大好きで、NBAバレエ団の「くるみ」にもその“エッセンス”をどうにか取り入れられないか、毎年いろいろと工夫を凝らしています。ただし、音楽の構成上どうしてもデュマ台本の流れに沿わざるを得ない部分があるため、そこは葛藤しつつも演出で柔らかく寄せています。
主人公マリーの運命は…
実は切ない?
ホフマン版の主人公はマリー。クララはその姉という設定(いくつかの訳では逆転していることも)。
物語の中でマリーは不思議な体験をしますが、それを周囲の大人たちは信じてくれず、やがてマリーは心身ともに衰弱。最後にはドロッセルマイヤーとともに“人形の国”へ旅立ちます。
それは現実逃避なのか、それとも…?受け取り方によっては“あの世”を想像させるような、ダークで哲学的な終わり方にも見えてきます。
でもこの、夢とも現実ともつかない“曖昧な世界観”こそが、ホフマン作品の魅力であり、
NBAバレエ団版でも「夢の中に迷い込んだような感覚」や、「正体の分からないドロッセルマイヤーの存在感」「執拗に追いかけてくるネズミたち」などを演出の中に散りばめています。
実はエンディングも毎年違う?
じつは…NBA版「くるみ割り人形」は毎年、エンディングが微妙に違うんです。
ストーリーの解釈や演出プランは、その年のダンサーや全体の雰囲気を見ながら試行錯誤しています。
たとえば昨年のラスト、「クリストフが再び人形に戻る」という演出は、ちょっと切なくも幻想的な雰囲気があり、お客様からも好評でした。
今年も、もしかすると…違う展開が待っているかもしれません。
だからこそ、「一度観たからもういい」とはならない。何度観ても“新しい”くるみ割り人形。
NBAバレエ団の「くるみ」は、まさに“進化するクラシック”なのです。
今年のクリスマス、あなたも一緒に“その先の夢”を見にきませんか?劇場で、心からお待ちしております。

