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安達哲治芸術総監督からご挨拶

NPO法人としての、我々の揺ぎない選択。

安達哲治芸術総監督

日本バレエアカデミーバレエ団(以下、NBAバレエ団)は21世紀の初頭、我が国のバレエ団として初のNPO法人となりました。NPO法人とは特定非営利活動法人、つまり利益を目的としない、市民の公益活動の法人のことですが、NBAバレエ団はなぜNPO法人であるのかをここではっきり伝えようと思います。また、NBAバレエ団を運営するにあたって会長以下、ボランティアで公益のために誠心誠意、働いているということを実現させている動機と情熱はいったい何であろうかについてもここに明記しておきたいと思います。

まずバレエ界においても他のオペラなどの芸術分野と同じく、我が国ではバレエダンサーの社会的な地位と報酬が他の諸外国に比較して著しく低いということ。その改善のためにも創設されたといわれる新国立劇場と、当バレエ団とは規模は異なりますが、民間レベルからその目的のために協働しているのがNBAバレエ団です。現状では我が国のバレエダンサーのレベルは諸外国と比較しても、総合的に非常にレベルが高くプロであるにもかかわらず、報酬と社会的地位はアマチュアのままでありつづけています。この事態を少しでも改善し最高レベルの作品を発信しつつ、バレエダンサーの地位の向上と報酬を欧米並みにしようと民間レベルから立ち上がったのがNBAバレエ団です。

NPOの法人化に関してよく聞かれることで、NBAバレエ団は財団法人や株式会社でも良かったのではないかということですが、前述したように我々は利益を目的としている団体ではありませんし、収益を分配していません。一時的に収益はあったとしても繰越金として次の公演の経費として活用しています。芸術活動で利益を上げようとは思っていませんし、実際に利益は容易に上がりません。故に、当バレエ団にとっては株式会社というのは相応しいとは言えません。また公益を目的としているという点では、財団法人でも良いのですが、かといって財団設立に必要な10億円の余裕のある設立資金も残念ながら、持ち合わせておりません。このような状況下で最終的に選択したのが、NPOという組織です。とかく、NPOというとレベルが低い「素人のアマチュア集団」というイメージを抱くかもしれませんが、当バレエ団においては、残念ながらそれは当てはまりません。社会通念上では、プロとアマの違いは、そのことに従事することから生計を立てている、すなわち報酬を得ていることをプロといい、アマとは趣味で、すなわち生計は別で立てていて、そのかたわら空いている時間があるときに無報酬で従事していることを指しています。NPO法人とは、とかくそのようにとられてしまいます。「プロはレベルが高く、アマは低い」と、しかし我々NBAバレエ団はNPO法人で報酬はアマですが、提供するレベルは最高度のプロであると自負しています。

例えば2000年、当バレエ団の「秘蔵コレクション」が文化庁芸術祭優秀賞を受賞し、毎年、定期的に数回の公演を行い、それぞれ国内外で高く評価されております。当バレエ団の理念に情熱とともに集まった12名の理事たちは、それぞれがバレエの道を半世紀近くにも亘り究め、心底からバレエを愛する芸術家であり、今まで各々がそれぞれのバレエ団で重責を担う立場にいた者たちで構成されています。また、それぞれが共に既存のバレエ団を越えた長年の友人としての信頼関係の絆で結ばれております。

バレエを愛し、またバレエ芸術の深化と創造を行い、我が国からの最高レベルの芸術作品の上演と発信などを行い、バレエダンサーの地位向上を目指す団体であるからこそ、同じ志を持ち、同じような波動を発する者が集まり結成されたのです。また、この他にも日本のバレエ界の現状を文化的アイデンティティー及びコラボレーションなどを通してより良くするためにもNPOになる必要があったということです。即ち政治、社会学者のドラッカーの言うように、舞踊環境の整備を、そして我々の使命である「社会への貢献」のためには、より専門的に何を何のためにいつ行うのか、そのためには何をやるべきではないのか、を認識し、より組織的に活動する際にもNPO法人が適していると思うのです。

またNPO法人を選んだもうひとつの理由に、団体としての所有する財産の帰属を国や団体所有とはっきりと登記する必要がありました。すなわちNBAバレエ団には多くのドロップ(舞台で使用する背景画)や衣裳、装置、小道具、また倉庫や土地があり、これらの所有権を巡って将来、疑惑や紛争の起こらないように法人所有登記する必要があったこと、並びに法人格でなければできない査証の申請や団体としての各種行政への申請、銀行口座の開設や諸々の登記などで、どうしても必要なことを優先し、この法人を選択したという経緯もあります。

一般的に言ってもこのような無報酬のボランティアを行うには、前提条件として従事する者は経済的な余裕と愛情が必要不可欠であります。NBAバレエ団の理事には永年バレエ界で活躍し一応の生活のゆとりと精神的な余裕、そして芸術のため、公益のために働くボランティア精神が必須であります。

NPOというような奉仕活動は、無報酬で社会奉仕に従事するだけの余裕のある者がこのNPOの経営に参加できるということであると思います。もちろん、団員については将来的には経済面の保証を目指すことは当然です。民間レベルでこれだけのコストのかかる総合芸術であるバレエ公演を数多く提供し実現していくのは奇跡的ともいえます。

今後は多くの心を分かち合える団体や企業と共に、官民の一体の協力した体制も仰ぎながら、この理念の実現に向けたいと思います。皆様からのご協力を切に懇願しております。

特定非営利活動法人 NBAバレエ団 理事長・芸術総監督 安達 哲治

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